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  特集 : 新型コロナウィルス情報 
 
正しい知識で感染拡大を防止し、早期に収束に向かわせましょう

   2019年12月に初めて感染が確認された新型コロナウィルスCOVID19、いまや歴史的事態となって世界を席巻しています。私たちは現実を正しく認識し、正しい対応をすることにより、感染拡大を防止し、一日でも早い収束を期せねばなりません。当会の専門家中村邦彦氏(H03医)に数回に亘って解説していただきます。

 
 


 第6回(2021年08月13日掲載) 
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 賛否両論の中無観客で開催された東京オリンピックに注目が集まり、日本選手の活躍にテレビの前で多く歓声が沸いた一方で、国内の新型コロナウィルスの患者数は急速に増加しています。長期に渡る行動制限に疲れたことによる気の緩み、オリンピックの影響などもあったかという話も聞かれますが、何よりも一番の原因は、実行再生産数の高い、簡単に言うと容易に感染しやすいデルタ株に置き換わってきたことと考えられます。8月になってから連日のように東京では4000人程度、日本全国で15000人程度の新規感染者が報告され、このまま増加傾向が続けば2週間後には東京で10000人越えとも言われています。感染者の増加とともに重症患者数も増加し、病状が悪化しても入院が容易でなくなってきており、本来は入院すべき方が入院できず、亡くなられたとの報告も多くなってきました。感染増加を抑えるには人流を7月と比べて5割以下にする必要があると言われていますが、ロックダウンのようなことができない日本ではなかなか難しいのが現状です。しかし高齢者での重症者の増加は多くなく、ワクチンの効果は出てきていると言われています。なかなか先が見えないように思われますが、今後国内の状況がどうなっていくのかは、ワクチン接種の先行している国の現状からある程度推測ができると考えられます。

 イギリスではワクチン接種率は1回で70%程度、2回で60%程度とかなり先行しており、一時期は感染者数が激減しました。しかしデルタ株の流行に伴い再び感染者数は増加して1日50000人程度になることもあるようです。しかし、死亡者数は一時期毎日1000人以上であったのが数十人程度となっており、かつ重症患者のほとんどはワクチン未接種者とのことです。患者数が多いのは使用されているワクチンが主にアストラゼネカ製であり重症化は十分に抑えられるが、ファイザー、モデルナ製に比べると感染阻止率は劣ることによるかと推測されています。イギリスはウィズコロナの生活を受け入れることを政策としており、行動制限を大幅に緩和してきています。ウィンブルドンのテニスの試合で観客席が密な状態でマスクをしていないのに驚いた方も多いかと思います。

 アメリカは分断された社会なので、民主党支持でワクチン推進派の多い州と共和党支持でワクチン反対派の多い州では差があり、ワクチン接種率は前者で60%程度、後者では40%程度となっています。結果として接種率の高い州では患者は減少傾向にあり、接種率の低い州では患者が増加してきています。そしてアメリカでも重症者は、ほとんどがワクチン未接種者と言われています。アメリカの報道機関は連日のように、ワクチンの必要性と現状ではまだマスクが必要なことを訴えています。

 これらの状況から鑑みると、国内で今の調子でワクチン接種が進んでいけば、10月頃までには感染状況は落ち着いてくるのではと予測されます。コロナ疲れと言われていますが、もう少しの辛抱で状況は好転していくはずですので、それまでの間、医療崩壊を起こさないようにもう一度皆が気を引き締めていくことが必要と思われます。日本の問題はワクチン接種の済んだ高齢者はまだ用心しているのに、若年者を主体とする未接種者の行動制限が緩んでいることにあります。以前は、若年者は感染しても軽症で済むと言われていましたが、重症化して亡くなられる方も少なくはなくなってきました。ワクチンを2回とも接種された方は極度に行動制限をする必要はないと考えられますが、ワクチン接種後も感染すること、いわゆるブレークスルーはあり、重症化はしにくいとはいえ知らずに周りの方に感染をさせる可能性があるのでマスク装着、これまでと同様に3密を避けるなど感染対策の必要はあると考えられます。トンネルの出口は見えてきていますので、もう少しのあいだ気を緩めないことが望まれます。

 
                                          
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