第2回(2020年9月15日掲載) 第1回 第3回 第4回 第5回 第6回
今回は検査についてです。COVID19の検査としてはPCR法、抗原検査、抗体検査があります。
まず、報道でもさんざん聞いたことがある名前のPCR法ですが、これはポリメラーゼ連鎖反(Polymerase chain reaction)の略称で、人体内のウィルスの遺伝子を見つけ出す検査です。ウィルスの中の微量な遺伝子をPCRにて増幅させて検出するのですが、その感度は59-70%くらいといわれます。これでも、感度としては抗原検査より高いのでCOVID19の検査としては最も信頼されている方法となっています。鼻や咽頭の拭い液から検出しますが、発症から9日以内であれば唾液での検査も可能です。報道では気軽にPCR検査と言っていますが、費用は高く、人手、時間のかかる検査方法です。忘れてはいけないことは前述の通り30%程度は見逃される可能性があるということです。すなわちPCR検査で陰性でも感染していないことの絶対的なお墨付きにはならないということになります。ですから濃厚接触者はPCR検査で陰性であっても隔離になるのです。芸能人が自費でPCR検査して陰性なので私は絶対大丈夫ですというような話がされていたりしますが、それは誤解といえます。日本のPCRの検査数が少ないとテレビ報道では連日のように批判されていますが、費用も人手もかかる検査をやみくもに増やすことがいいとは言えません。症状もなく濃厚接触でもないのにただ心配だからPCR検査をするというのは意味がありません。過去2週間の行動履歴、現在の症状にかんがみて医療機関が総合的に判断して疑わしい集団に対して、PCR検査を行うのが良いと言えます。日本のPCR検査数は当初は確かに不十分でしたが、現在ではほぼ必要かつ十分な検査量であると考えられます。トランプ大統領は米国のPCR検査数が多いことを得意気に話していますが、米国の感染率、死亡者数を見ればこれがあまり意味のないことは分かると思われます。
抗原検査はウィルスが感染した細胞が特異的に産生する抗原をこれに対応する抗体にて検出する方法です。鼻や咽頭の拭い液を用いて30分ほどで簡単な検査キットでできるものでPCR法と同様に確定診断に使用できますが、ウィルス量が多くないと検出できないのでPCR法より検出力は劣ります。
抗体検査は、過去にCOVID19に感染していたかを検査するものです。感染すると免疫反応が起こり体内で抗体が産生されるので、血液から測定します。抗体はCOVID19に感染して約2週間経つとほぼ100%近く検出できますが、それ以前では残念ながら50%程度と言われています。したがってCOVID19に現在罹っているかの診断には使用できません。人口のどれぐらいが感染したかの疫学調査に用いられていますが、感染後2カ月ぐらいすると抗体が消失する人もいることが分かってきて調査結果の判断は難しいものがあります。
ではどの検査法も絶対的な感染していないことの証明にならないならば、どうすればよいかですが、それは隔離ということになります。このウィルスは発症2日前から感染力があり、発症の7-10日後には他人への感染力はなくなることが分かってきました。ですから、濃厚接触者で無症状の場合には隔離開始から10日で隔離解除、発症者では発症から10日経過し、かつ軽快して72時間経過すれば隔離解除となります。以前はPCR法にて2回検査して陰性であれば隔離解除となっていましたが、現在はPCR検査を行わなくても隔離解除になります。というのも発症してから10日経てばPCR検査で陽性でも感染しないことが分かってきたからです。もう感染力が無くても体内にウィルスの遺伝子が残存してしばらくPCR検査で陽性になることがあります。これはCOVID19だけの特殊なことではなく、以前から知られている現象です。例えば、「はやり目」の俗称で知られる流行性角結膜炎は治癒しても、感染力の無いウィルスの遺伝子が角膜に残存してしばらく混濁が残り見にくさが続くことはよくあります。またCOVID19で入院していたからと言って、隔離解除になった方をいつまでも遠ざけることは全く必要のないことです。
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